ハートビート』(英語: Heartbeat)は、日本の作曲家である坂本龍一の9枚目のオリジナル・アルバム。

1991年10月21日にヴァージン・ジャパンからリリースされ、プロデューサーは坂本が担当した。

本作は、ハウス・ミュージックのリズムと手法が取り入れられているが、「皆がハウスを聴くのは、1小節に4分音符で4つ打たれるバスドラムのビートを、心臓の鼓動(=ハート・ビート)の様な安定したリズムと捉えた一種の胎内回帰願望である」というコンセプトがある。

ディスクジャケット

ディスクジャケットは、オレンジを基調とした坂本の顔がアップされたポートレートとなっており、CDの初回特典として、特製折り紙ブックレット仕様になっていたが、糊付けされて完全に開く事が出来ないため、ブックレットとしては見辛いものとなっている。

批評

『CDジャーナル』は、音楽性に関して「どんな人とセッションしようとも、絶対それとわかってしまう坂本フレーズが、このソロ作ではとても少ない」としたうえで「有名陣多数参加もインパクトはなく、ハウスの匿名性威力に八つ当たりする次第」と否定的な評価を下している。

収録曲

国内盤

海外盤

LPレコード

CD

楽曲解説

国内盤

  1. ハートビート
    • 仮タイトルは「バルトーク」。最初のデモを聴いた富家哲がミックスまで担当した。
    • ベスト・アルバム『US』(2002年)に収録される予定だったが、収録時間の関係で割愛された。
  2. ラップ・ザ・ワールド
    • ラップはディー・ライトのDJディミトリーによるロシア語で、内容は「積極的にコミュニケーションをとりましょう」というもの。サンプリングで使われている“So You make the time now”と“We play the game for each other”はラジオで流れていた別々のCMから抽出した。また、ジミ・ヘンドリックスの「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」のイントロ付近をループして使っている。
  3. トゥリストゥ
    • 三菱地所CMイメージ・ソングとして使用された。
    • テーマは湾岸戦争で、戦死した息子の骨を拾いに旅に出た父親に対し「爆弾の熱で溶けてしまっているので無駄だよ」と呼びかける内容である。坂本がピアノを適当に弾いたあと、いいところだけ取ってミックスした即興の楽曲で、フランス語のラップを入れてみたいと考えていたところ、レコーディング初日に偶々隣のスタジオにいた、ビル・ラズウェルがプロデュースしていたFFFのマルコ・プリンスがフランス語でラップができるということでその場でレコーディングを行った。
  4. ルル
    • サックスはラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーであるが、あくまでハウス的な素人っぽいニュアンスで演奏している。他にもアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズが演奏。スウィングはリズムマシンで実現し、ピアノはサンプリングしたものを使用している。
  5. ハイ・タイド
    • 朝の5時に浮かんだメロディを元に作った曲。バート・バカラックのアレンジとコード進行に似ていたため、仮タイトルは「バカラック」だった。歌詞は坂本から「海の見える風景」として依頼された鈴木慶一が「湘南」「東京湾」のイメージとして制作した。
    • 海外盤やリミックス・アルバム『ハートビート〜リミクシーズ』(1992年)には英語バージョンが収録されており、こちらはアート・リンゼイが作詞し、地中海をグライダーで飛行しているイメージの内容となっている。
  6. ソング・ラインズ
    • ペドロ・アルモドバルの映画『ハイヒール』(1991年)のメインテーマの元となった楽曲。
  7. ヌアージュ
    • ボーカルはアルジェリア出身でパリ在住の教師であるフーリア・アイシで、ニューヨークに来てもらってレコーディングした。フーリアが、幼少期に祖母に歌ってもらった伝統的なアラブの歌で、内容は帰らない弟を思って呼びかける楽曲となっている。
  8. サヨナラ
    • アルバムと同時発売されたシングル。あえて坂本自身を邦楽アーティストとしてイメージさせるために制作され、作詞は若いアーティストを採用するつもりだったが、結局残った高橋幸宏、高野寛、鈴木慶一の中で一番青い印象のある鈴木の歌詞が使われた。
    • タイトルは、最も外国人に知られている日本語が「さよなら」だろうと考え、作曲前につけられた。
  9. ボロム・ガル
  10. エピローグ
    • サントリー・ウイスキー“響”のCMイメージ・ソングとして使用された。
    • 映画『シェルタリング・スカイ』(1990年)のサントラ『シェルタリング・スカイ』(1991年)を作っている際、ベルナルド・ベルトルッチとの摩擦によるストレス解消のため、即興でキーボードを弾いた際、コンピュータに録っておいた楽曲が原型となっている。
  11. タイナイカイキ
    • すべて即興で演奏されており、その上にピグミーやケージの声をかぶせている。ヴォーカルはアート・リンゼイ。

海外盤

  1. タイナイカイキ II
    • 「タイナイカイキ」の英語バージョンで、作詞をデヴィッド・シルヴィアンが担当している。
    • 国内では、ミニ・アルバム『体内回帰 (Tainai kaiki II)』(1992年)に収録された。
  2. クラウド #9
    • 国内では、ベスト・アルバム『ベスト・オブ・坂本龍一ヴァージン・トラックス』(1993年)に収録された。

参加ミュージシャン

国内盤

リリース履歴

脚注

注釈

出典

外部リンク

  • Heartbeat - Discogs (発売一覧)

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